
したがって、実はニュールックがすべての女性に歓迎されたわけではなかったのです。ディオールが行く先で「ニュールック反対」のデモ隊に囲まれるといったこともあり、女性をコルセットに戻すなという意見も多くあったようですね。
当時のヨーロッパは、大戦の煽りで物資不足が続き、衣料は配給制の国が多く、そのためニュールックのように生地を多く使用するものを作ることは難しかったのも事実ですが、戦争が終わり、平和を取り戻す方向へ向かっている世界の中で、これまで「オシャレ」を閉じ込められてきた女性に「オシャレ」を取り戻すように働きかけたこと、女らしさを取り戻すよう働きかけた動きは世界に衝撃を与え、資材等の問題で戦後元気を失っていたオートクチュール、ファッション(モード)業界に活気を与えたことは事実といえます。
また賛否両論の中でも、ディオールが他界するまでの10年間は、絶大なパワーをもち続け、王座が揺るぐことはありませんでした。結局のところ、シルエットの時代は、アメリカの大衆消費社会に溶け込みましたし、ブランドビジネスを先駆けて行ったことで成功を収めました。これについては、ディオールの比類ない先見性に他ならないと言われています。
現在のクリスチャン ディオールは、ジャンフランコ フェレ、ジョン ガリアーノの活躍もあり、モダン、トレンドセッターとしての地位を確立し、バッグ、コスメ(香水などの化粧品)、アクセサリー、サングラス、ネックレスなどが人気となっています。